Translate

2016年9月19日月曜日

和顔施

 この前、ふと気がついたこと。ドイツはなんと「和顔施(わがんせ)」だらけ… ヨーロッパに住み着いて20年以上たって、今頃やっと気が付きました。なんのこっちゃ、と思われている方も多いかと思いますので、少々説明を。和顔施とは仏教用語で、いわゆるお布施の一つです。お布施は世間一般に考えられているような、お寺に収めるだけのものではありません。布施は他人に惜しみなく与えること。それは物質だけではなく、体を使った行動も布施になります。それもなにか特別な重労働をするだけではありません。例えばこの和顔施は、他人に笑顔、優しい顔を向けること。それが立派な他人への布施となります。親が子へ見せる笑顔は立派な布施です。そしてまた、公共の場でのちょっとした譲り合いで見せる笑顔。一人でお使いに来ている子供にみせる、同じ買い物に来ている主婦の笑顔。バスや電車を待つ列の隣同士へのちょっとした笑み。散歩ですれ違う際の笑み。銀行の自動支払機の用を済ませ、次の人へ「どうぞ」の代わりの笑み。これらは全て赤の他人へ向けられる笑みです。このちょっとした笑みが、どれだけ日常生活に小さな安心感を与えていることか。赤の他人から向けられる、「敵じゃないよ、おなじ人間だよ。心配ないよ。」宣言。子供にちょっと笑みを見せるだけで、性犯罪者の疑いをかけられたり、混み合う電車の中で「お互い大変ですね」のはずの笑顔が痴漢に間違われたり…和顔施は今の日本に大きく欠けているものに感じられます。

0 件のコメント:

コメントを投稿