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2015年7月20日月曜日

国際養子縁組

 先日、国際養子縁組のドキュメントをテレビでみました。デンマーク人夫妻がエチオピアから姉弟の二人を養子に迎える3年にわたるドキュメントでした。感想は「ありえない」の一言です。同じ養子親の立場として言葉を失いつつ見ました。
http://www.ardmediathek.de/tv/Reportage-Dokumentation/Dokumentarfilm-im-Ersten-Die-Adoption/Das-Erste/Video?documentId=29439670&bcastId=799280
 ありえない一つ目は、養子(乳飲み子ではありません)が養子親に引き渡される直前まで、実親と子供が一緒にいること。何がいけないの?と思われる方がいるかもしれませんが、ちょっと想像してみてください。或る日突然慣れた親元から直接、言葉も通じない、肌の色も違う、生活様式も違う「未知の人間」の元に送り込まれる幼児はどのように感じるでしょうか。元の生活に戻りたい一心でもちろん反抗します。全身全霊で意思表示をします。そして養子親は途方にくれます。「こんな子供は望んでいなかった」と。このドキュメントでは4歳になる姉が、どこまでも拒否反応を示します。それに対してまだよちよち歩きの弟は、実親から引き離されたという感覚さえもまだはっきりしていないようで、理想の養子となっています。
 問題は養子親。養子に限らず、子供がなんでもおとなしく言うことを聞く方がおかしいです。子供が泣く時、叫ぶ時、決まって理由があるはずです。それを理解しようともせずに、「支配者のごとく、この子供はうちの中を叫びで制圧しようとしている」なんて言葉が出てくることに絶句です。全く子供への共感はありません。ましてや養子という特殊状況も全く理解していません。よくこの夫婦は心理テストを通ったなと思いました。
 結局、この姉の方の子供は、デンマークで里子として別の家族に引き渡され、のちにデンマークの孤児院に預けられたそうです。あってはならない状況です。かわいそうで言葉がありません。孤児院に預けられる直前に、「(あなたはいい子じゃないから)もうママもパパもできないのよ。」と、語る養子親は鬼です…この子の心の傷の大きさは果てしないです。
 変わって養子に出したエチオピア人の夫婦はというと、養子に出したことで金銭援助がもらえると思っていたらしく、それがないとわかって落胆します。金銭援助があれば、人身売買になってしまいます。この夫婦は両方ともHIVポジティヴです。養子はネガティヴです。日々の薬代もままならず、6人の子供を抱えて迷った挙句の判断でした。
 毎日、実の子がどうしているか気になってしょうがない。せめて発育報告書がみたいと駆けずり回ります。この発育報告書は、どの国際養子縁組者も、定期的に提出しなければならない義務となっています。この報告書は母国の関係団体に送られ、実親がそれをみたければいつでも見れる仕組みです。私たちも定期的に写真と一緒に提出しています。この報告書にたくさんうれしかったことや楽しかったことが書けるといいね、きっと実のパパとママも喜ぶよ、と私たちは説明しています。この報告書が1回のみで、それ以降数年分が全くこのエチオピア人の実親には届いていませんでした。デンマークで何がおこっているのかまったく耳に入らないわけです。約束と違う、というわけで実親は怒り心頭に達します。
 この養子縁組団体は違法ということでもう存在しないらしいですが、どれだけ不幸な子供がヨーロッパに送られたかと思うと胸が痛いです。エチオピアは当時ハーグ条約に加盟していませんでした。日本は最近になって加盟したようですが、もっと大きく取り上げて欲しいです。日本はこの条約の草稿に参加していますが、加盟はしないという何とも不可解な立場に長くいました。その理由は「日本人に限って養子なんて」というつまらない驕りから来ていたのは事実でしょう。実際、某国会議員が発言していたのを記憶しています。
 今日は興奮して、なんだかまとまりのない文章になってしまいました。日本ではまだまだ特別養子縁組が日の目をみませんが、ここドイツから養子親のひとりとしてこれからも発言していきたいと思います。

 
 
 

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