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2018年3月21日水曜日

タクシーモハメッド5

  結局、治療中の送迎の運転手で一番回数が多かったのは、社長さんではなくアフガニスタン出身のAさんでした。年齢が私と近いこともあって、いろんなことを話しました。Aさんにはとっても美人な奥さんと、3人の息子がいます。一番上の息子さんはイタリア人のハーフ女性と結婚するらしいそうです。絵に描いたような若い美しいカップルで、お父さんのAさんが自慢するのも無理ありません。嫁はカトリックでいいの?と聞いたら、そんなの当然じゃないか、俺の息子が選んだんだから大丈夫だと言っていました。
 Aさんのみならず、タクシーモハメッドの中東出身の運転手さん達から聞いたかれらのイスラム教徒としての世界観は、全くもって健全でした。たとえば、女性のスカーフについてAさんいわく、「なんで美しい髪の毛を隠さなきゃいけないんだ?アホな男のせいだ。」とのこと。まったくもって同感。
 また、かれらのテロリストへの怒り、そのおかげで「外国人」のうえに更に太字でいらないレッテルを貼られていること。その怒りは並々ではありませんでした。ヨーロッパ中右寄りになってきた今日此の頃、ドイツもその勢いは増すばかりです。変にインテリぶった右寄りの政治家は、90年初頭のネオナチブームの若者達よりタチが悪い気がします。更に難民問題で中東出身、ブロークンなドイツ語というだけで眉間にしわを寄せる人間はいます。私も時々外国人蔑視態度には合いますが、彼らよりはその回数はだいぶ少ないと思います。放射線治療の待合室で、高齢のドイツ人女性にどのタクシー会社を使っているの?と聞かれ、「タクシーモハメッド。アフガニスタン系のタクシー会社でおすすめよ。」と言ったら、もろに嫌な顔をされました。しかし、そこで引き下がったらだめなんです。ちゃんとその反応に嫌悪感と人種差別をする人間を見て驚いたというはっきりした態度をとらなければいけません。w もちろん私はちゃんとそういった反応を全身で示したので、まずいと思ったその女性「あ、そうね、考えとくわ。あはは。」と、突然いい人ぶりを始めましたが時すでに遅し。相手が間違っていましたね…w
 モハメッドさん以外の運転手さん達も、世界中を転々としていたことには変わりなく、国が崩壊して脱出したら無事終了、ではなかった彼らの苦労話は、私たち日本人が理解できるものではない過酷なものです。ちなみにこのAさんは国籍はアフガニスタンのままだそうです。いまじゃどこにでも行けるし、問題ないよと言っていました。年に一度故郷でサフラン農家をやっているお母さんを訪ねるのがとっても楽しみなんだそうです。私は意外に思ったのですが、彼らなんども里帰りをしています。カブール以外はどうにか帰れるような環境にあるそうです。続く…

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